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by epiplectic3110
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白い花 月の明かり
月夜の晩 僕は一人柿の木の下にいる
爛熟したその実は 甘い腐臭を漂わせる

眼前には 一面の曼珠沙華
真っ赤な花が 月に照らされている


背後にせまる暗い森からは
遠くトラツグミの鳴き声が聞こえる

僕は曼珠沙華をかき分けて
遠い森へと向かう

血のようなその花をかき分けて
赤い暗闇を突き進むと

突然一輪だけあらわれる 白い花
サボテンのような葉から陶然と咲く 月下美人

僕はその前にひざまずき
やさしく いとおしく
その羽のような 純白な花弁をなでる


月下美人は 月夜にだけ咲き
翌朝になればしおれてしまうという


僕はそこに腰を下ろし
暗い森を背に 月を眺めた

今日一晩この花のそばにいよう
この花が落ちてしまうまで ここで座っていよう

そうすればきっと今宵は
あのトラツグミの声に 誘われないから
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# by epiplectic3110 | 2005-10-14 21:57 | 月の下に棲むものたち | Trackback | Comments(11)
最後の物たちの国で
それをなしとげるとすれば、
かつて自分を人間として考えるのを可能にしてくれていた
もろもろの要素を、

すべて抹殺することになってしまうように思えるのです。


私の言おうとしていることがわかりますか?


生きるためには、自分を殺さねばならないのです。
だからこそこれだけ多くの人が戦いを放棄してしまうのです。

どれだけ懸命にあがこうと、
結局は負けてしまうことを彼らは知っています。

そしてひとたび負けてしまえば、
あがくことなど全く無意味になってしまうのです。


Paul Auster 〜In the Country fo Last Things〜
ポール・オースター 『最後の物たちの国で』
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# by epiplectic3110 | 2005-10-14 20:51 | | Trackback | Comments(4)
for your growing heart fracture
あなたがいつも身に付ける
重く 冷たい 純白の その鎧に
心まで凍てつきそうになった時は

いつでもこのひだまりにくるといい

ひだまりに寝転がり
くつろいでいる
あなたのその笑顔がすきだから

僕はあなたのひだまりを侵さないように
そっとここに座っていよう

この日溜まりに だれも踏み込めないように

本でも読みながら
うたでもうたいながら


あなたが傷ついて 夜空を見上げるとき
僕もおなじ月を見上げていよう

遠くはなれた この場所で

あなたのいる 遠い異境の戦場に
太陽のあたたかな光を送ることはできなくても

僕は僕の戦場で 明日を生き延びて 
座っているから

だからあなたは 忘れないで この場所を
心まで その血に染まってしまったとしても
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# by epiplectic3110 | 2005-10-07 01:55 | | Trackback | Comments(8)
トラツグミの哭く夜に
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ぽつかりと 月のぼる時
森の家の寂しき顔は 戸を閉ざしける

佐佐木信綱 『新月』より



いざよう月は消えはて
浮かぶ月の明かりは 容赦なく僕を狂わせる

壊すがいい ありのままに
月が人知れず流す涙は 雲に隠れて見えないのだから

夜に哭くトラツグミの声に誘われ
迷い込んだこの森で

壊れていく自分を分かりながら
先へ先へと進まずにはいられない

やがてこの躯が壊れきった時
僕はもう先へ進むことができなくなるだろう

その時は最後の力を振り絞って
この森に心を埋めよう

もう二度と この心が
暗い森をさまようことがないように
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# by epiplectic3110 | 2005-10-01 21:36 | 月の下に棲むものたち | Trackback | Comments(5)
十六夜の心
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我が心 澄めるばかりに 更け果てて
     月を忘れて 向かふ夜の月

           花園院「風雅集」秋中より

すみずみまで澄み切ったと思えるほどに
心も 夜も 深々と更け尽くし

ふと気がつけば

自分が月をみていることさえ忘れて
月に向かっていた


いざよう心は なお寒々しく
寄り添う気持ちは なお白々しく

何も求めずに
そばにいたいと願うものの
それもかなわず

何も求められずに
そばにいてほしいと願うものの
それもかなわず

求め 求められつも
支えあえず 倒れ込むのみ

今はただ心乱さず
心にあの月が映るように
静かにありたい

そう願いつつ
眺める十六夜の月

どんなに眺めようとも いざよう 我が心
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# by epiplectic3110 | 2005-09-24 00:20 | 月の下に棲むものたち | Trackback | Comments(10)