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by epiplectic3110
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生 死 人 光 流
西武線のホームで
行き交う人々を眺めながら
コーヒーのプルタブに爪をかける

流れる 人
ふと目を上げると
電光掲示板に流れる 文字

文字を眺めていると
あたかもゲシュタルト崩壊するように
文字が分解していく

発行するLED
その点滅の総体が 文字となり 流れていく
右から左へと


あぁ これは
人の生き死にと 同じなんだと
ふと 思いつく


人は生まれて 数十年で死に至る
生きているか死んでいるか
それだけを単純に見ていくと
人の生き死には デジタルだ

生きている そして 死んでいる
その総体を眺めると
それは人の歴史になり
人の営みになる

その中の ただ一つの光点
それは 自分であり あなたであり
目の前を通り過ぎていく 誰かなのだ

LEDが光って そして消えるまでの瞬くほどのひととき
その刹那に 人生を詰め込み
人間の歴史は営まれていく

愚かな事過ちを犯す人生
人に尽くし 果てていく人生
生まれてすぐに死ぬ人生
百年以上生きる人生

長く光ろうとする人生
自ら光を消してしまう人生

そのすべての 儚い夢と 幸福と 絶望と
人生という一生懸命さをも

デジタルに換えて
人は 尽きることのない時の波に流されていく


一つの明かりが消えても
それは大したことではない

光り そして消えるからこそ
営みは形を作り

賢く そして時に愚かな 人という歴史を刻んでいく

全てのLEDが点いたままだったのなら
なにも形作らず
ただ そこにあるだけの 光る板になってしまう

自分を その一瞬の光にゆだねつつ
その光りの一瞬であるがゆえの素晴らしき意味に
いとおしさを感じることができれば

きっとそれを
自分自身が生きていくという
希望にすることが出来るだろう

自分が生まれて そして死ぬということ
それが無数の光点の一つに埋もれようとも

その一つ一つが 愛し 傷つけあって生きてきたことに
これからも気がつけるように 忘れないように

生きていきたい

そんな思考を コーヒーと共に飲み干す
木曜日の夕暮れ
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# by epiplectic3110 | 2006-02-27 23:55 |
今日は 生きているだろうか
小児科の患者さん

先週末はカリウム6.4まで上昇し
CA19-9は18000と 見たこともない数値を示した。

癌の 末期だ

僕とさして変わらない年齢
あっけらかんとした態度の裏腹
何を考えて毎日を生きているのか

そして 今日まだ 生きているのか

僕には分からない


あす 病棟に行ってカルテがなければ
それはもう さようならしたということ

バレンタインぐらいまで もって欲しいと思うのは
僕だけではあるまい

外科のKグループは 頭を抱えていた
もう なすすべはないのだ

麻酔科医のDr.Mは 麻薬の調整に苦労している
WHO方式に忠実に 見事なコントロールだ

それでも今日
あの人は 今日 生きているだろうか


明日 病棟で 回診で あなたに会えるように

少しだけ傲慢な 願いを 星に託して 月に囁いて
夜空を見上げ 何かを考える

何かを

あの うたを
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# by epiplectic3110 | 2006-02-12 20:20 |
金魚
ぼんやりと金魚鉢を眺めている
日曜日の昼下がり
食べかけのパスタがひからびていく

わたしは思い出している
昨日の夜のことを

あなたは帰っていった
飲みかけのシングルモルトは
氷が溶けて 水割りのよう

金魚が水なしで生きられたら
金魚鉢はいらない

何も感じず
誰も愛さず
呼吸出来たのなら

ずっとそばにいられるのに

わたしの金魚鉢は
いつ壊れるのか



***
BONNIE PINKの「金魚」を聞いていたら
こんな情景が浮かんできた

帰りの電車のなか
すこし 悲しい気持ちになった

映像化するなら 井川遥あたりがぴったりかなぁ
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# by epiplectic3110 | 2005-12-20 16:09 |
選択する残酷
今日はお話をする前にこの絵をご覧頂きたい

a0009216_2046488.jpg


水辺に佇む男女 あるいは恋人かもしれない
しかし 不自然にのびた木の枝は
もう一つの形を作り出している

胎児 発生したままの 無垢な姿
そこには 蛇にそそのかされた原罪も
汚れきった社会もない

クラゲのように 羊水の中を漂うだけだ



人間は 同時に二つのものを認識することは出来ない
胎児をみているときは 佇む男女を認識できず
佇む男女を認識しているときは 胎児を認識できない

ルビンの壷や老婆と婦人のだまし絵とおなじで
誰もが知っているような原理だ


ある人は 同時に両方を認識できると言うかもしれない
でもそれは 両方の認識を交流電流のように
高速で入れ替えているに過ぎないと僕は思う

人は 選ばなければならないものがある
人生において 佇む男女が必要なときは
佇む男女の絵だと思わなければならないし
漂う胎児が必要ならば
漂う胎児の絵だと思わなければならない

この絵に限っては 両方に見える絵だということは出来るかもしれない
しかしながら その両方に平等に 意識を割り振ることは

永遠に出来ない


残酷なものだ

たとえどちらかを選ぶのだとしても
その答えは永遠に正しいし 永遠に間違っている


僕は正しく そして間違い続けている

後悔だけは したくない
その一つだけを 選んだことを


そうやって 一つ一つ間違えながら
間違えたことを否定しないだけの優しさにつつまれて

今日もこうやって 生き続けていく
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# by epiplectic3110 | 2005-11-28 21:01 |
Pulseless Electrical Activity
ベッドサイドに 女性が佇んでいる
彼女の横では まだ幼い子供が居心地悪そうに立っている

ベッドに横たわる 遺体

「お父さんはー?お父さんはー?」
と 何度も声を上げる 子供

医師は静かに説明を始め
心臓マッサージの中止を指示する

レスピレーターは外され
心電図の電源は切られる


なおも騒ぎ続ける子供をすっと抱き上げ
土気色になった父親の姿を 見せる母

黙り込む 子供


涙すら流れない 別れの瞬間



挿管したとき 吹き出してきた胃の内容物は
きっと今朝 家族と一緒に食べたご飯だったのだろう

ご家族を部屋に入れる前に綺麗に拭き取られていたけれど
挿管介助をしていた僕の靴の裏には まだこびりついているだろう

ご家族が入る前に 体を拭いたとき
背中に貼られていた湿布

今はゴミ箱の中にあるけれど
彼を死に追いやった心筋梗塞は
肩こりとして弱いシグナルを放っていたのだろう

42歳という若さで 亡くなった彼
僕はただ その最後に佇んで 何もできずにいた

込み上げてくる涙も
僕が流すべきものでないと
必死で堪えて

この場から離れたい気持ちも どこかに追いやって
ここに佇んで この別れの瞬間を 頭に焼き付ける


彼女は最後まで泣かなかった
ただ呆然と 言葉も発しないで
「蘇生を中止します」
と言われた時だけ すこしだけうなずいた



自分の手を後ろで組んだとき
手首の脈拍が触れた

自分の心臓が動いているのが 不思議だった


昨日会社を早退した時に病院に行っていれば
あるいは助かったかもしれない

そんな空しいことを考えて
それは自分が考えてはいけないことだと 考えるのをやめて


葬儀業者の担架にご遺体を移す作業を手伝い
初療室をあとにした



「先生 エッセンしてきていいよ」
といわれ 一人昼食に向かう

今日の日替わりランチは ハンバーグだ

人が目の前で死んでも
五分後にハンバーグを食べる職業がある


僕は きっと 慣れていくのだろうか?

僕は これから この日常の中で
きっと 慣れていくのだろうか?


そんなことを考えた
先週の火曜日

外は雨で きっとこんな時でも 世界中で いろいろな人が 生きている
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# by epiplectic3110 | 2005-10-24 18:12 |