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by epiplectic3110
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櫻下歌
小高い丘の上にあるこの公園には
ベンチが一つと街灯が一本
そして 桜の木が一本

ベンチに腰掛けると
街が一望でき

見上げると
見事な桜が咲き乱れている

見渡す限りの雪景色
先ほどからまた ちらりちらりと降り始めた雪の中
僕の腰掛けたベンチにも 雪が積もりはじめた

見上げると相変わらず 満開の桜
灰色の雲と よくマッチしている

この街は常に夜
満月と雲と雪 そして満開の桜
なにかが ゆがんでしまった街

不釣り合いなほど大きな月が
雲の切れ間から顔を覗かせ
空からは 尽きること無く 雪が降り続ける

「Shirokanipe ranran pishkan」

口を開くと こんな歌が口をついて出た
知らない言語 途絶えてしまった言葉

「konkanipe ranran pishkan」

ベンチの下から 別の声で歌が聞こえる
のぞき込むと そこには黒猫がいた
長いしっぽを優雅に操り
調子をとるようにして歌っている

「この歌は どういう意味なのですか?」

とたずねると

「梟の神の歌 銀の滴降る降るまわりに」

という 確かに見上げると
舞い落ちる雪は 銀の滴のようだ

「あなたは梟の神だったのですか?」

とたずねると
鼻を鳴らしてそっぽをむかれた

どこかゆがんだ世界
寒くないのに雪が降り
雪が降るなか 桜が咲き
雲の中に 月が浮かび
猫が言葉を話す

遠く 灰色の街をながめる

「ここは どこなんだろう?」

黒猫はいった

「ここは お前自身」
「お前の心 お前の体 お前の前世 すべてがここにある」

忘れたのかね?といった風に見上げる 猫

「ここに長くいてはいけないよ」
「こころが焼き切れてしまう」

そう 言い捨てて 猫は去っていく

きっと
この街自体も もう長くはないのだ

雪と共に舞い落ちる桜の花びらを手に
僕はベンチから立ち上がった
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by epiplectic3110 | 2006-03-30 11:49 |
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