みんな ありがとう
by epiplectic3110
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Les Misérables
他人の身の上に起こったことを
こんなところに軽々しく書くこと

いつも いつも いつも
躊躇しながら書いているのだけれど
それは正しいのか 間違っているのか まだ分からない

今回の出来事も 書いて良いのかわからない
知っている人は 出来るだけ そっとしてあげたいと思うだろうし
僕も そう思う でも 書きたい気持ちは 止められない

あなたのことを 無断で日記に書きます
ごめんなさい 知っている人は そっとしておいてくれると うれしい

あなたの受けた悲しみを はかり知ることはできないから
ぼくは あなたにかける言葉さえないけれど
そして こんな文章しか書けないけれど

書くことを どうか ゆるしてほしいです

そう これは 僕とはそこまで親交があるわけでもない 知人のお話
実話であり つい先週のことであり 
僕が口を出していいというシロモノではない

でも 思ったことを 書かせて欲しい
あなたの知らない こんな場所に

虚実を織り交ぜつつ…

       *




それは 夕暮れのことだった
僕はいつものごとく 
電車内である人の日記を読んでいた

       *

その人は 詩人
友人を伝って紹介されたのだが
web上のやりとり以外 実際のやりとりを したことはない

彼の感性は 不思議だ
泳ぐ魚をつかみ取るように 言葉をつかみ取り
魔法のナイフで切り取るように 空間を料理する

そんな 詩人だ

彼は 生まれつきの 病を抱えていた
先天性の心疾患

二十までは生きられないだろうと
そう医師は宣告されていた

その人生が 彼の感性を磨いたのかもしれない

       *

その日は 彼の25歳の誕生日の前日だった
彼は 医師の宣告に反して 25年もの月日を重ね
恋人と夕食を食べる約束をして 幸せに過ごしていた

はずだった

幸せそうな日記 になるはずだった その日の日記は
こうだった


Title:生きてない。

あれ。7時に駅いけばあえるよね。
僕は生きてる。あれ


みなは いつもの ちょっぴり変わった独り言かと思った
ふつうのコメントを残している人が 何人もいた
でも 彼の知り合いのコメントと その後の日記で
僕は 何が起きたのかを 知ることが出来た


Title:あの人がいなくなった。もう会えない。24才最後の日。誕生日ケーキ食べるんじゃなかったの?

7時に約束したんだけどな。

死んじゃった。


みなが 混乱したり心配したりしたコメントを残した一番最後に
「彼女が交通事故で亡くなりました」
そう 一言書き添えた

幸せでいて欲しい彼に なぜ このタイミングで

そう 思ってしまったのは 僕だけではあるまい

       *

あれから数日が経った

僕は色々な人たちの日記をRSSでみるのだが
いまの彼の日記は 辛い

死を受け止めようとする彼と
まだ受け止められない彼と
せめぎ合いのよう

他の人たちは 
今日は教習だった とか
どこどこでご飯を食べた とか
今日はとことんついてない日だったとか
仕事が大変だったとか

それぞれの 日常を 日記に書いている
そのなかに 一緒に並ぶ 彼の日記

人が一人 死んでしまうということが
いかに世間に影響しないか

かく言う自分も
その日記を眺めながら
夜行バスの中 携帯を片手に スキーに向かっている


寝付けない夜 バスの中で 
うとうととする 友人や 後輩をみながら
闇に 目をこらして
その闇に つかまらないように 用心しながら
一つだけカーテンの開いた窓の外を 眺める


きっと 自分が死んだとしても
僕の恋人や 友人 家族
色々な人に 波紋を残すかもしれないけれど

それも 大海の波紋に過ぎず
また いつもの 世界が まわりつづけるのか

そう考えると 泣けてきた


広がって 消えていってしまう波紋を
少しでも残していたいと思って いま キーを叩いている

近しくもない僕が 彼にかける言葉など ない
ただ その悲しみの淵から 立ち直ってくれるのを 祈るばかり

僕がこんな事を言うのは おこがましいけれど
亡くなられた恋人さんのご冥福を お祈りいたします

いそがなくてもいい 無理に元気にならないで 
僕は また あなたの作品に出会えることを そっと 待っています
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by epiplectic3110 | 2006-03-11 14:16 |
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