みんな ありがとう
by epiplectic3110
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Pulseless Electrical Activity
ベッドサイドに 女性が佇んでいる
彼女の横では まだ幼い子供が居心地悪そうに立っている

ベッドに横たわる 遺体

「お父さんはー?お父さんはー?」
と 何度も声を上げる 子供

医師は静かに説明を始め
心臓マッサージの中止を指示する

レスピレーターは外され
心電図の電源は切られる


なおも騒ぎ続ける子供をすっと抱き上げ
土気色になった父親の姿を 見せる母

黙り込む 子供


涙すら流れない 別れの瞬間



挿管したとき 吹き出してきた胃の内容物は
きっと今朝 家族と一緒に食べたご飯だったのだろう

ご家族を部屋に入れる前に綺麗に拭き取られていたけれど
挿管介助をしていた僕の靴の裏には まだこびりついているだろう

ご家族が入る前に 体を拭いたとき
背中に貼られていた湿布

今はゴミ箱の中にあるけれど
彼を死に追いやった心筋梗塞は
肩こりとして弱いシグナルを放っていたのだろう

42歳という若さで 亡くなった彼
僕はただ その最後に佇んで 何もできずにいた

込み上げてくる涙も
僕が流すべきものでないと
必死で堪えて

この場から離れたい気持ちも どこかに追いやって
ここに佇んで この別れの瞬間を 頭に焼き付ける


彼女は最後まで泣かなかった
ただ呆然と 言葉も発しないで
「蘇生を中止します」
と言われた時だけ すこしだけうなずいた



自分の手を後ろで組んだとき
手首の脈拍が触れた

自分の心臓が動いているのが 不思議だった


昨日会社を早退した時に病院に行っていれば
あるいは助かったかもしれない

そんな空しいことを考えて
それは自分が考えてはいけないことだと 考えるのをやめて


葬儀業者の担架にご遺体を移す作業を手伝い
初療室をあとにした



「先生 エッセンしてきていいよ」
といわれ 一人昼食に向かう

今日の日替わりランチは ハンバーグだ

人が目の前で死んでも
五分後にハンバーグを食べる職業がある


僕は きっと 慣れていくのだろうか?

僕は これから この日常の中で
きっと 慣れていくのだろうか?


そんなことを考えた
先週の火曜日

外は雨で きっとこんな時でも 世界中で いろいろな人が 生きている
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by epiplectic3110 | 2005-10-24 18:12 | | Trackback | Comments(10)
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Commented at 2005-10-24 20:29 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by un_antique at 2005-10-24 21:43
慣れていくのと麻痺していくのはきっと違う。
心理学をやっていると、常々そう思う。
特にあなたたちを見ているとね。

俺には何も言えないけれど。
俺はたとえ臨床現場に立ったとしても、そこまで人の生死に直面することはないのかも知れないから。
Commented by PURE_PURI at 2005-10-24 21:45
消えてしまう命を、つなげることのできるお仕事でもありますよね。
それにも慣れてしまうのでしょうか。
Commented by GALANT's Cafe at 2005-10-24 21:56 x
うんうん。
そうそう。たとえ目の前で辛いことが生じても、生きていかなきゃ、ね。
Commented at 2005-10-25 02:10 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by blacktiger at 2005-10-27 19:35 x
私も自分が流すべきではない涙をこらえながら
宣告が終わり家族が去った初療室で
冗談を言って笑いあう医師たちを
眺めていた覚えがあります。

敢えてそうしているのか 慣れなのか その両方か。
未来の自分と重ね合わせてなんともいえない気持ちに
なったあの日のこと、忘れられません。
Commented at 2005-10-28 00:41
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by QB at 2005-11-02 02:33 x
Blogに来ていただきありがとうございます.QBです.
コメントを見て,「おや?」と思っていたのですが,医学部の方なのですね.同業とは知らず,コメントの返しが・・失礼しました.

わたしも実習中,幾度か「きょう~さんステっちゃってさぁ」という会話をしている医師を眺めてきました.
たとえ1週間でも自分が診た患者さんが亡くなると悲しいものでしたが,その横で主治医は笑っていました.
泣いていたら仕事にならないというのは離解できます.けれど,人としての気持ちも捨てたくない.

あのときの矛盾した気持ちは,忘れたくないですね.
Commented by epiplectic3110 at 2005-11-03 19:35
>rinさま
流すべきではない というのは
医療者だから ではなく
救命救急センターの急患は
長い間みてきた患者さんでもない

患者さんにとって
医師は所詮アカの他人に過ぎないから

自分が泣くことは あまりに白々しくて
なくべきでないと 思ったのです

>たくろー
麻痺と慣れ その両方なのかな と思います
そして えびのいうとおり あえてそうしているのだとも思います

>えびび
そうさね わざとそうしているだろうし
慣れる ということでも 麻痺する ということでもないかもね
そりゃ 少しはあるだろうけどさ

でも 何とも言えない気分になるよね
ふぅ

>鍵せんせ
いつも暖かいコメントありがとうございます^^
そうですね 僕も考え続けることが大切だと思っています
考えるのをやめないように 生きていきたいですね

そのための ポティングといっても 過言でない
将来に読み返して どう思うのかなぁ と思います
Commented by epiplectic3110 at 2005-11-03 19:37
>QBさま
いらっしゃいませ〜 いえいえとんでもないです
こちらこそ突然失礼いたしました^^
笑っているのは わざとなのか 気にしていないのか
分かりませんが あの日 あのときに感じたことを 忘れないように
書き留めてみました

自分たちが 将来 どんな医師になっていくのか
その 起点になれば いいなぁ って おもいます
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