みんな ありがとう
by epiplectic3110
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日常
今日も電車に揺られ 小説を読む
物語を消費する そして歩き続ける

white cort/stethoscope/necktie
脆弱な心を白い鎧に包んで、心に純白のメッキをかける

ふと思う ネクタイは元々兵装から発達したことを誰が知るだろう?

死んだような目でカルテに書き込む

7/11
S) 足の痺れがとれない 呼吸は安静にすれば楽 cough(-)
NSAID外用でpain全体的に↓だがやはり右胸壁に違和感あり
気管支鏡での生検はやはり嫌だとのこと

O)fever(-) pulse86/整
Conj P(-) Conj b(-)
LS:no rale 右上肺野呼吸音減弱
HS:no murmur
abd:flat&soft  mod


今日も変わらない日常
A/Pは書かず ステーションを去る


「私は八人兄弟の長女だったからもともと弱い人間じゃない」
「でもね こういう歳になると悲観的に考えてしまうんだよ」
「あんたのような若い人にはわからんだろうけど」

突然浮かんでくる言葉”お察しします”
この言葉は相手のことを察しきれない時にのみ使う言葉であることを
僕は知っている

そして僕は彼女の苦しみを理解できないでいる

今日、処方にSSRIが追加された


ステーションをあとにして上る階段
彼女の上れない階段を一段抜かしで上っていく
扉を開けると、七月の暴力的な日差しが瞳孔を痛めつける。


ポケットには聴診器・ペンライト・ペンとメモ用紙・手帳
ステーションに遅くまで残っていると ナースが声をかけてくる

「せんせ 今日当直ですか?点滴お願いしてもいい?」

学生なので無理だと伝えると
僕のネームプレートをのぞきこんで

「そんな格好だから先生かと思ったわよw」
と 笑いながら去って行く。

そうですね と呟き ラボ出ししたデータを温度板に書き込んでいく


ここ数日間 心ここにあらずという感じだね と昼食中に友人は言う
合コンの話をしながら食べる山菜そばは
他人事のように胃袋に落ちていく

心休まらない班員との生活
音楽と物語を消費しながら耐え抜く毎日

これが自分の望んだ将来だったかは、今となっては分からない
医者という仕事がよく理解できないまま 今日も過ごす


四年間、なんの勉強もしていない
疾患のことなど まるで分かっていない
そう痛感しながら、このまま一年過ごしてしまうことを予感している。

どうして 自分はこの仕事を選んだのか
どうして あんなにも無邪気に突き進んで来れたのか

なぜ検査を受けない患者は邪険に扱われるのだろうか
不定愁訴は、ひとまとめにくくられていいのだろうか


わからないことが 多くなってきている
そして明日もまた 物語を消費しながら
電車に揺られ カルテに書き込む

僕の日常
心の表面を滑っていく 夢見た将来

今の僕に 助言などしないでくれ
あなたには わかりっこない
この孤独と不安を

今の僕に 優しい言葉などかけないでくれ
あなたには わかりっこない
この苛立ちと悲しみを

それは「お察しします」と 同じことなのだから




※この文章に掲載された患者さんは完全に架空の人物であり
 実際の個人に関する情報を漏洩するものではありません
 誤解なきよう
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by epiplectic3110 | 2005-07-12 02:24 |
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